【独断と偏見で10項目】「公認会計士とは?」を、わかりやすく簡単に説明します

公認会計士 土肥卓哉

「公認会計士って、どんな職業なの?」「公認会計士ってどんな人なの?」

一般論については、公認会計士協会のサイトTAC等の専門学校のサイトなどを見ればわかると思いますので、ここでは「私の実体験」のみにもとづいたお話をします。

ですので、以下の内容には私の独断と偏見が混ざっています(ただし、私が見て来た限りでは事実です)。

そして、正確性よりもわかりやすさを重視しています。

あくまでも、1サンプルとして、ざっくりと公認会計士について知りたい方にとっての参考になれば幸いです。

では、独断と偏見で10項目、参りましょう!

1. 公認会計士の独占業務は監査証明業務

まず初めに。一応、堅いお話から。

公認会計士の独占業務は「監査」です。厳密には、「監査証明業務」と言います(公認会計士法第2条)

監査証明業務とは、「会社の決算書が正しいかどうかをチェックして、その確らしさを証明(保証)する」仕事です。

その目的は、投資家(会社の株式を買う人)や債権者(銀行など会社にお金を貸す人)を保護することが目的です。

監査証明業務は、公認会計士でなければできません。

なので、「会社の決算書が正しいかどうかをチェックして、その確らしさを証明(保証)する」仕事をしたければ、公認会計士になるしかありません。

逆に、どうしてもその仕事をしたいのでなければ、公認会計士になる必要はありません。

公認会計士の独占業務は監査証明業務。

これで、公認会計士にしかできないことの説明は終わりです。

2. 税理士と行政書士になる資格が付いてくる

よく「公認会計士って、税理士とどう違うんですか?」と質問されます。

これにシンプルに答えると、「公認会計士は監査証明をする人」「税理士は税務申告等をお手伝いする人」です。

だから、公認会計士と税理士は、全然違うんです。

全然違うんですけど、公認会計士になると、税理士になる資格が付いてきます。

正確に言うと、税理士の試験を受けなくても、「登録」すれば税理士になれます。

同じく、行政書士にもなれます。

私の周りで独立している公認会計士の中には、税理士「登録」している人が多くいます。

なので、公認会計士=税理士ではなく、公認会計士でも税理士「登録」しなければ税理士業務はできません。

公認会計士になると、税理士と行政書士になる資格が付いてきます。

そういう意味では、とてもお得です。

3. 給料は悪くない

誰と比較するかによりますが、公認会計士の給料は悪くないです(私個人としては良いと思っています)。

私が監査法人に入社した2000年当時、初任給は年収ベースで450万円(残業代なし)でした。いまもそれほど変わらないか、ちょっと多い(500万円〜600万円)くらいでしょうか。入社する時の年齢によっても感じ方は異なるでしょうが、初任給としては、わりと良い方だと思います。

あと、30代で年収1,000万円は普通にあり得ます。一方で、パートナーになっても2,000万円いかない、とかいう話がありますが、それもどこに基準を置くか次第でしょう。少なくとも、私は悪くないと思います。ぶっちゃけ、私の周りにいる公認会計士でお金に苦労している人はいません。

なお、監査法人では、退職金はほとんどありません。定年まで勤め上げる人もほとんどいません。その分、給料が高くなっているとも言えます。

4. 転職先もわりとある

転職先は、わりと多いと思います。また、公認会計士向けの独自の求人も結構あります。

あと何より重要なのが、「会社の枠を超えた」公認会計士同士の繋がりがあることです。

個人的には、これが公認会計士になって一番良かったなと思うことです。

監査法人を辞めて、事業会社に転職する。ベンチャー企業に転職する。コンサルティング会社に転職する。プライベート・エクイティ・ファンドに転職する。独立して公認会計士事務所や税理士事務所を構える。自身で会社を設立して起業する。

公認会計士のキャリアは人それぞれですが、どこに行ったとしても個人としての繋がりは続いています。

私がいた会社(監査法人やコンサルティング会社)では、退職ではなく、「卒業」と言っていました。

会社を去っても、個人としての繋がりは残る。個人の繋がりを通じて、いつでもいろんな会社や業界のことを知ることができる。

これは、なかなか悪くないです。

5. モテるかどうかは本人次第

たまに「公認会計士はモテるか?」みたいな話が出て来ますが、特にモテません。

少なくとも私はモテたことはありません。

私の周りでも、公認会計士だからモテる、という人を見たことはありません(男女問わず)。

モテるモテないは、その人自身のかっこよさや人間性に依存する点は、他の職業と同じだと思います。

ただ、若い頃には、公認会計士だから呼ばれるコンパはありました。でもまあ、それだけです。

公認会計士だからモテるという訳ではないです。

というか、そもそも「公認会計士」自体があまり知られていません・・・

一応、「怪しい人ではなさそう」「ちゃんとした人っぽい」という程度の信用は付いてくると思います。

6. わりと幅広い知識を持っている

公認会計士になるには、わりと幅広い知識を身につける必要があります。

例えば、公認会計士試験の科目には、以下があります。

(必須科目)

  • 財務会計論:商業簿記、財務諸表論
  • 管理会計論:工業簿記(原価計算等)
  • 監査論
  • 企業法:会社法(より幅広くは商法)、金融商品取引法
  • 租税法:法人税、所得税、消費税等

(選択科目:以下の中から1科目を選択)

  • 経営学
  • 経済学
  • 民法
  • 統計学

これらを勉強するのは、試験に合格するためというよりは、実務で使うためです。

ですので、公認会計士であれば、企業の活動に関わる会計、監査、商法、税務についてはもちろん、その他に、経営、経済、民法、統計等の知識は一通り持っていると言えます。実務でどれだけ使いこなせる知識を持っているかは人それぞれですが。

7. 数字の裏側を読んで楽しめる

公認会計士の仕事は、「会社の決算書が正しいかどうかをチェックして、その確らしさを証明(保証)する」ことなので、その数字がパッと見て正しそうか間違ってそうかの感度は高いです。

理由は、もともと数字に強いというよりは、間違っている数字を何度も見ているからです。

場合によっては、1億円の売上が計上されているにも拘わらず、実際には取引実態がない(取引があったという証拠がない、あるいは証拠が捏造されている)ということもあります。

なので、公認会計士は、数字を読めるだけでなく、その数字がどんな取引にもとづき、どんな証拠にもとづき、どんな風に作られたのか、についての勘が鋭いです。

公認会計士が数字をじっと見ている時は、その数字自体を見ているというよりも、その数字が出来上がって来るまでのプロセス(かっこ良く言えば「物語」や「ドラマ」)を想像している感じです。

これは、小説の文字を読みながら、その物語の光景をリアルに想像するのに似ていると思います。

ただの数字を見て楽しめるという点では、かなり変態だと思いますが、なかなか面白いです(もしかしたら、私だけかもしれませんが・・・)。

8. 「経営する」こと自体には詳しくない

公認会計士は、「経営する」こと自体には詳しくないです。

こう書くと公認会計士の方は嫌がるかもしれませんが、私は自分自身の経験からこう思います。

経営学は知っていますし、経営を見たこともありますが、「経営する」という現在進行形の行為を実体験していないからです(自分で事務所等を「経営している」方は別です)。

公認会計士が「監査で」関わるのは過去の決算書です。いわば、「経営する」という現在進行形の行為の結果が数字として現れた書類に過ぎません。

公認会計士は、過去の決算書、過去の数字、過去の取引の確からしさなどについては詳しくチェックしますが、だからと言って「今日、会社がお金を借りるべきか否か」「借りるなら、どの銀行からどのくらいの金利でお金を借りるのが良いか」までは考えません。つまり、「監査」では、未来に向けた意思決定や行動については関わりません。監査業務の範囲外だからです。

なので、公認会計士だから経営に詳しいだろう、と思うのは誤解です。

いろんな会社の経営を見て来たことは事実ですが、「経営する」という動詞については詳しくないです。

ただ、「他の会社では、どうしているのか?」を聞くことは有益です。

他の業界や他の会社でのやり方について、守秘義務に反しない形で教えてくれます。

9. 株が値上がりするかどうかはわからない

たまに「値上がりする株ない?」と聞かれます。

公認会計士だからと言って、「値上がりする株」がわかる訳ではありません。それがわかれば、私を含め公認会計士はみんな億万長者です。

もちろん、公認会計士として仕事をしていると、株の値上がりに繋がりうる内部情報(インサイダー情報と言います)を一般公開される前に知ることもあります。

なので、公認会計士は自分が関与している会社の株を買うことは禁じられています。また、知り合いに「この会社の株、買っといたらいいよ」とインサイダー情報にもとづいて薦めたら犯罪です。

くれぐれも、公認会計士に値上がりしそうな株を聞くのはやめましょう。

ただ、投資をしている人は結構多いです。株式や投資信託への投資だけでなく、不動産投資をしている人もいます。

お金の流れを読む、お金を投資と費用に区別して扱うという点では、長けていると思います。

10. 将来AIに仕事が奪われるかどうかは不明

公認会計士の仕事(=監査)は、将来AIに奪われてなくなる、と言われます。

ですが、私としては「そうかな〜?」と思います。

これはどんな職業でも言えることですが、AIに奪われる業務もあれば、奪われない業務もあるでしょう。

例えば、AIのおかげでこんな良い面があるでしょう。

  • いままで手作業で超面倒だった業務をAIくんがちゃちゃっと片付けてくれるようになる
  • いままで人間の経験と勘だけではわからなかった数字の間違いや不正をAIくんが発見してくれるようになる
  • その分、人間がより重要な業務(監査先の実態把握やコミュニケーション等)に時間を避けるようになる など

一方で、AIのせいでこんな悪い面もあるでしょう。

  • いままで手作業でやっていた業務がなくなる(その業務を請け負っていた人の仕事がなくなる)
  • AIを使えば発見できたであろう数字の間違いや不正を発見できない時に人間が責任を問われるようになる
  • いままで以上に、現場の実態を掴む能力と想像力を駆使する能力が人間に求められるようになる など

将来、監査のやり方はどんどん変わっていくと思います(実際いまでもかなり変わって行っているようです)。

どんな職業も時代の変化とともに変わっていくものなので、取り立てて、公認会計士の仕事が将来AIに奪われるかどうかを気にする必要はないと思います。

むしろ重要なのは、「会社の決算書が正しいかどうかをチェックする」ことを通じて、「投資家(会社の株式を買う人)や債権者(銀行など会社にお金を貸す人)を保護する」という監査の目的(あるいは監査の必要性)があり続けるかどうか、です。

逆に言えば、「会社が、投資家や債権者からお金を借りる」「投資家や債権者が、会社にお金を貸す」という金融市場がある限り、監査証明業務は必要とされ、公認会計士の仕事がなくなることはないと思います。

最後、ちょっと難しい話になりましたが、公認会計士の将来性について考えるヒントになれば幸いです。

おわりに

以上、独断と偏見で10項目。公認会計士とは?を、わかりやすく簡単に説明させていただきました。

ただ、あくまでも「私なりに」わかりやすく簡単に説明した「つもり」でしかありませんので、もしわからないところ、追加で知りたいことなどがあれば、ぜひお気軽にご質問ください。

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公認会計士 土肥卓哉
1974年生まれ、大阪府出身。
神戸大学卒業後、大原簿記専門学校を経て、2000年にデロイトトーマツグループに入社。延べ100社以上の上場企業、非上場企業、学校法人、倒産企業などの監査、経営コンサルティング、再生・M&Aに関与。
個人事業主、契約社員を経て、2018年にアンドシング株式会社を設立し、代表取締役に就任。文の里商店街にあるgallery &sing、てらこやアンドシングの店主。
著書に『ジブンノシゴトのつくり方』(ギャラクシーブックス)。
プライベートでは、高校生2人の父親。趣味は、歌づくりとキャンプ。特技は片耳動かし。

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