未成年の投資で、気をつけたいこと

公認会計士 土肥卓哉

2022年度から、高校の家庭科で必修になっている金融リテラシー。
2学期に入ってしばらく経ちましたが、そろそろ、「資産形成」の話題は出ましたか。

まだの家庭も、コレからそういう話が出てきそうな予感がするご家庭も、お子さんが「実際に投資をしてみたい」と言ってきた場合の備えは十分でしょうか。

実際にどう対処するか、どう取り組むか。我が家で取り組んでいる事例も織り交ぜながら、お伝えします。

※ 本記事は未成年者の株式投資を推奨するものではありません。投資は自己判断・自己責任となります。
※ 株式投資を始める際にはリスクとリターンの知識を付けた上で、余剰資金で始めましょう。

証券口座は、未成年でも開設できる

まず、前提の知識として株式投資に必要な証券口座は、2022年4月1日に成人年齢が18歳に引き下げられ、18歳以上で開設することができるようになりました。ただし、親権者の許可、同意があれば18歳未満でも「未成年口座」として開設することが可能です。

「親権者自身の口座開設有無」が前提条件になるなど、各証券会社によって、条件やルールが異なるので、実際に開設しようと思っている証券会社にしっかり確認するようにしてください。

親が投資未経験の場合

ご両親のどちらも、普段から株式投資、証券取引に馴染みがないのなら、子どもが株式投資を始める前、あるいは同じタイミングで、親も株式投資を始めましょう。

頭で分かっていても、実際にやってみないことには、どんなリスク、リターンがあるか分かりません。不測の事態が起こった時にどう対処すればいいかも、経験してみないと分かりません。

親がよく分かっていないのに、多少なりともお金が絡む分野、社会的な責任が生じる分野で、子どもの証券口座が開設できたからといって、放任主義で「やりたいようにやっていい」とはなりませんよね?

子どもが何をしているのか、どこへ向かおうとしているのかを把握する、見守るためにも、親も投資を学ぶことが大切です。

特に重要なのは、「損をしている状態」を体験することです。損をしている状態でどれだけ冷静でいられるかが投資の成否に影響します。たとえ子どもが慌てていても、親は慌てずにドンと構えていられる。そのくらいの余裕は身につけておきたいものです。

「バーチャル株式投資」でお試ししてみる

「損をしている状態」を体験するためにも、いきなり実際のお金を投資する前に、株のバーチャルゲーム、「バーチャル株式投資」をやっておくのもオススメです。これでお子さんの興味が満たされるのなら、実際にお金を投じる株式投資に進まなくてもいい、とも思います。

※ オススメのバーチャル株式投資のご紹介は、割愛させていただきます。

ただ、株式投資の醍醐味はやっぱり、どれだけ儲けるか、損するか。疑似体験では満足できない、体験できないことも多々あるので、本気で学ぶつもりなら証券口座を開設して実際に投資する他ありません。

親が責任を持てる範囲で

我が家のルールとして、

  • 信用取引はNG(現物取引のみ)
  • 子どもの入金はNG
  • 親が口座を見られること

何かあった時に、親が責任を取れる状態を保つことと、「取引そのもの」に集中してもらいたいので、投資予算も親が準備して入金しました。

信用取引は、損失が元本割れでは済まない恐れがあるので許可していません。また、子どもの入金をOKにしてしまうと、損を取り戻すために子どもが自分のお金を注ぎ込んでしまう可能性があるのでこれも許可していません(ギャンブルで負け込んでお金を突っ込むようなものですね)。あと、親が口座を見られるようにしているのは、子ども自身に自己牽制が働くようにするためです。なので実際には、親が子どもの口座を見ることはほとんどありません。

また、何か不測の事態が起こった時は、「絶対に怒らないから」すぐに報告するように、と教育に力を入れています。コレを機に、「報連相」を身につけてもらえればとも思っていますが、株が簡単に儲からないのと同様に、なかなか思い通りには行きません……。

たまに、親の方から「最近どう?」と聞いたりしています。

あくまでも、学業、本業最優先

株取引ばかりに気を取られて、学業や学校行事、部活動など、その時期でないと体験できない数々の「青春」などが疎かになってしまうのは、本末転倒です。

各ご家庭のルールにもよると思いますが、就寝時間や消灯時間は守る、学校の勉強はする、学生の本分を十分にこなして、家庭では家庭で与えられた役割、手伝いもやる。株取引をするなら、それらをやった上でやる。

社会人、大人になれば、やろうと思えばいつでもどこでも出来るので、我が家ではそういうルールでやっています。

ルールをちゃんと決める

株式投資、証券取引に手を付けると、どうしてもそこに目や気持ちが行きがちで、お金のことや目先の損得がチラつきます。ただ、「それだけ」になっても、子どものためにはなりません。

子どものために、お金を扱う怖さ、社会的な責任を負うことの怖さもしっかり伝えながら、お互いに納得できるルールを選定し、ルール違反があればその都度、本人としっかり話し合う、必要に応じてルールを改定していくようにしましょう。

利益が出ることもあれば、損をすることもある株の世界。
家計も家庭も子どもの将来も守るために、ルールをちゃんと決めましょう。

※ 本記事は未成年者の株式投資を推奨するものではありません。投資は自己判断・自己責任となります。
※ 株式投資を始める際にはリスクとリターンの知識を付けた上で、余剰資金で始めましょう。

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公認会計士 土肥卓哉
1974年生まれ、大阪府出身。
神戸大学卒業後、大原簿記専門学校を経て、2000年にデロイトトーマツグループに入社。延べ100社以上の上場企業、非上場企業、学校法人、倒産企業などの監査、経営コンサルティング、再生・M&Aに関与。
個人事業主、契約社員を経て、2018年にアンドシング株式会社を設立し、代表取締役に就任。文の里商店街にあるgallery &sing、てらこやアンドシングの店主。
著書に『ジブンノシゴトのつくり方』(ギャラクシーブックス)。
プライベートでは、高校生2人の父親。趣味は、歌づくりとキャンプ。特技は片耳動かし。

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