政治の中心も経済の中心も東京に移って久しい昨今ですが、商売の都「商都」と言えば、まだまだ大阪。「天下の台所」と呼ばれ、世界初の先物市場ができた場所。
それにも関わらず、「まいど」と並ぶ関西人の代表的な挨拶といえば、「儲かりまっか」に対する「ぼちぼちでんな」。素直な経済事情を話しても良さそうなのに、「ぼちぼちでんな」が決まり文句として定着したのは、歴史的な経緯もある模様。
「ホンマかいな」とツッコみたくなる話題を題材に、素直にお金の話をしにくい理由を考えてみます。
「ぼちぼち」のルーツは淀屋?
「淀屋」と聞いて、大阪市北区や中央区で思い出すのはやっぱり「淀屋橋」。アンドシングスクールがある堺筋本町からでも、北に歩いて10分強。大阪メトロ、御堂筋線でも梅田と本町の間にある駅の名前ですが、大阪市役所のすぐ南、土佐堀川に架かる大きな橋が「淀屋橋」。
江戸時代の豪商、淀屋が私財で架けた橋だから、淀屋橋。それと、「ぼちぼち」がどう絡むのか。
諸説ありますが、この淀屋さん、民間の商人でありながら莫大な財産を築いたため、幕府に目をつけられて処罰を受け、財産を没収されたというお話が残っています。
つまり、儲け過ぎて目立つと処罰される、お上に槍玉に挙げられてしまうから、「儲かりまっか」と聞かれても、素直に「儲かってます」とか「儲かって仕方ないですわ」とは言えず、「ぼちぼちでんな」が精一杯。実態をはぐらかしつつ、ほどほどに稼いでます、「元気にやってます」ぐらいの意味にとどめている、と。
京都も京都で、本音と建前
淀屋橋から京阪に乗れば京都へ出られますが、京都も京都で古都故に、独特の本音と建前の世界が築かれています。特に、洛中、いわゆる碁盤の目の中は凄まじく、戦いの歴史、裏切りの歴史もあって、素直に本音を話しにくい地域です。
商売人もいますが、老舗の職人さんも多く、その人たちの前でお金の話をするのも、風情がないといいますか、似合いませんよね。
お金の話は好きなはずなのに、表に出しにくい?
メディアのイメージを反映しているコテコテの大阪っぽい地域は意外と狭いですが、それでも「それ、ナンボしたん?」や、いかに安くいいものを購入したか、いかに値切ったかが一つのコミュニケーションにもなる地域。
お金の話そのものは嫌いじゃないはずなのに、直接的な儲け話や、儲かって仕方ない話というのは、耳にする機会が多くありません。安さの話はどんどんするのに……。
もっと気軽に、他愛もなくお金の話やお金にまつわる不思議な話、秘密の話を語り合いたいのに、商売の都でそれをやりにくいとは、不思議な話。お金の話も、気軽にしたいものですね。